初めての天体望遠鏡を選ぶにあたって

専門用語や様々なスペックに戸惑う方も多いかもしれません。いったい何を基準に選んだらよいものか・・・

実はそれらをやみくもに追いかける必要はありません。メインのレンズである「対物レンズ」。そして、そのレンズをしっかり支え、思った方向に向けるための「架台」大事なのはこの二つです。

「倍率」ですか? それは気にしないでください。あとから説明しますが、倍率はまやかしの数字です。


※ 初心者に最適な、屈折式鏡筒+経緯台式架台の望遠鏡を中心に解説します。なぜ屈折式 + 経緯台が初心者に最適なのかについては、下記のQ&Aをごらんください。

参考リンク:Q&A「初心者にとって理想的な望遠鏡ってどんなものですか?

対物レンズは天体望遠鏡の心臓部

天体望遠鏡の心臓部対物レンズです。対物レンズが良くないものだと、他のパーツをどう工夫しても見えるようにはなりません。では良い対物レンズとは、どんな対物レンズでしょう。

天体望遠鏡の対物レンズ

収差(=像の歪み)が少ないのが良いレンズ

それは「収差」の少ない対物レンズです。レンズを通して何かを見るとき、そこで見える像には様々なタイプの歪みが生じます。その歪みが少ないレンズこそが良いレンズです。

その歪みを100%なくすことはできないのですが、できる限り減らすことはできます。そのために必要なのが、適切な設計です。

初心者でもわかる、良い設計の見分け方

設計なんて専門的過ぎて分からない? 確かにそうなんですが、実は、良い設計と悪い設計には、簡単な見分け方があります。それは、筒の長さを見ることです。

レンズには焦点距離というものがあります。この焦点距離が長くなれば、筒の長さも長くなります。理論的には、焦点距離が長ければ長いほど、収差は少なくなります。筒が長いほどよく見えるのです。(※1)

対物レンズというと、一般的に気にするのはレンズの大きさ(※)かもしれません。確かにレンズを大きくすれば性能は上がりますが、焦点距離が短いと、その性能は発揮されず、歪みの大きいぼやけた像になります。


※1 設計次第では短くても良く見える望遠鏡を作ることができますが、それにはコストがかかります。10万円を超えるような中級車向けの望遠鏡の中には、そういうものもあります。

※2 正確には「対物レンズ有効径」と呼ばれます。これが大きければ大きいほど光を集める力(集光力)が増すので明るく見えます。

なぜ、短い筒の初心者向け望遠鏡が売られているのか

焦点距離を長くすれば、良く見える望遠鏡が作れるということは、メーカーの技術者ならだれでも知っている基本的なことです。それなのになぜ、短い筒の望遠鏡が作られているのでしょうか。

それは、筒が短いほうが送料が安いからです。

初心者向けに販売されている短い筒の望遠鏡は、ほぼ100%が、中国などの海外製です。燃料費の高騰で送料は飛躍的に上がり、海外から運んでくるとなると、大きなサイズの荷物は驚くほどの配送料がかかります。これを節約するために筒はどんどん短くなり、最近ではちょっと信じられない短さの望遠鏡がでてきました。

架台は、対物レンズと同じくらい大事な要素

対物レンズが大切というのは、わりと伝わりやすいのですが、実はそれと匹敵するほど大切なのが架台です。

天体望遠鏡本体と、三脚を固定して、思った方向に向けるときに動かす部分が「架台」です。カメラと三脚を固定するための「雲台」と似ています。

天体望遠鏡の架台(左が微動タイプ/右がフリーストップタイプ)

しかし、カメラ雲台とは大きく違う点があります。

雲台が固定するための道具なのに対して、架台は動かしながら使う道具です。天体は、それほど速いスピードで動いているように見えませんが、天体望遠鏡で倍率をかけた視野の中では、あっという間に動いていきます。追いかけるには、それに合わせて架台がスムーズに動くことが重要です。

カメラ用の雲台

よく見かけるのは、上のようなカメラ雲台と同じタイプのものを天体望遠鏡に転用しているケース。大量生産品を転用すれば安く作れますが、これで星を追いかけるのは大変です。

三脚にもご注意

三脚にしても同様で、カメラ三脚の転用が見られます。最悪なのは3段以上に伸縮するような三脚です。レバー式接続部分がヤワで、天体望遠鏡の使用には耐えられません。天体望遠鏡の三脚は、強度が重視されるため、せいぜい2段までの伸縮で、接続部分もネジ込み式でで強固に固定されます。

上はカメラ用の5段伸縮の三脚、下は望遠鏡用の2段伸縮の三脚

倍率はまやかしの数字

「倍率」は、初心者が特に気になる数字かもしれません。しかし、この倍率を上げるのは、技術的には全く難しくありません。どんな望遠鏡でも、数百円の安価な接眼レンズや、バローレンズという中間レンズを、ひとつ付属させるだけで、スペック上の倍率は上がります。

大事な「架台」や「対物レンズ」の質を無視して、無理に倍率を上げたとしても、グラグラ揺れる視界の中に、ぼやけた暗い像が見えるだけです。

でも「見える」ってレビューに書いてあるけど・・・

短い鏡筒をカメラ用の三脚・雲台にのせて、高い倍率をアピールする天体望遠鏡セット。でもアマゾンのレビューが1000件以上もついていて、★は5つ。なぜこんなことが起こるのでしょう。

これは業者に頼んで書かせたサクラレビューです。最近では、サクラを見分ける「サクラチェッカー」というサイトもあります。気になったら、そのレビューが本物かどうかチェックしてみてください。


外部リンク:サクラチェッカー

初心者の方にも、ホンモノの凄さを知ってほしい

良い対物レンズを、使いやすい架台に乗せて使う。これは天体望遠鏡の基本です。

私たちスコープテックは、この基本をしっかり守り、本当に使いやすくてよく見える天体望遠鏡を作りました。それらを1万円台~の、初心者の方でもお求めやすい価格で販売しております。

2007年の販売開始以来、17年にわたって、スコープテックの入門用天体望遠鏡「ラプトル」や「アトラス」は、多くのお客様からご支持をいただきました。

「スコープテック ラプトル」で検索すれば、ユーザーの皆様が書いた、素敵なご感想やブログなどがたくさんヒットします。国立天文台やJAXAなどが選ぶ「世界天文年セレクション」も受賞しました。

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