●今月のハイライト
12月15日のふたご座流星群(月明かりを避けて観察しましょう!)と12月26日に部分日食が全国的に観察できます。史上初の恒星間彗星 2I/2019 Q4ボリゾフ彗星が太陽系を高速で通り抜けますが、上級者でないと撮影は難しそうです。

〈目次〉
★12月の惑星たち
★12月の天文現象カレンダー
★12月の星空情報
★おすすめテレビ番組 コズミックフロントNEXTに弊社のラプトル60が北尾浩一先生と一緒に登場します!12月5日22時から23時です。
★イベント情報

★12月の惑星たち
水星 初旬△ 11月28日に西方最大離角になり、明け方の日の出前の東の空低空で観察できます。
金星 ○夕方の西空で高度を上げてきました。
火星 ×9月4日に合、引き続き太陽に近く観測は難しい。
木星 ×初旬金星と並んで見えますが、見える位置が地平線に近すぎて望遠鏡で覗いても良く見えません。12月28日に合(地球から見て太陽と同じ方向)になります。
土星  △宵の南西の空低くなりました。今シーズンの観測も終盤です。
天王星 ○夜半前に南の空に見えています。
海王星 △夕方南西の空低い位置。

★12月の天文現象カレンダー

12月4日(水)上弦の月、夕方に見える半月です。月のクレーター観察の好機です。

12月8日(日)史上初の恒星間彗星 2I/2019 Q4ボリゾフ彗星が近日点通過

12月11日(水)海王星が東矩

12月12日(木)満月。満月の時は、クレーターはあまり見えませんが、海の部分の色や、クレーターから四方八方に広がる光条が良く見えます。
12月15日(日)ふたご座流星群が極大(月齢18.5)
11月18日(月)しし座流星群が極大
12月19日(木)下弦の月 深夜過ぎから明け方に見える半月です。月のクレーター観察の好機です。
12月22日(日)冬至
12月23日(月)こぐま座流星群が極大
12月26日(木)新月 夕方に部分日食が全国的に見られる。太陽の一部分が月にかくされる。東京で39%、那覇で47%、札幌で27%が欠ける。前後数日は一晩中月明かりの影響がなく、星空の観測に絶好。
前後数日は一晩中月明かりの影響がなく、星空の観測に絶好。
12月28日(土)木星が合
12月31日(火)大晦日

★12月の星空情報

※全ての図版は、クリックやタップをするとさらに大きく表示できます※

☆ふたご座流星群とこぐま座流星群

三大流星群ので最大の活動規模を誇るふたご座流星群ですが、今年は、満月過ぎの月齢18.5の満月過ぎの月がふたご座の隣のカニ座で煌々と輝いているので、月明かりに邪魔されてしまいます。しかしながらふたご座流星群当日に満月だった2016年に比べると、月齢18.5の月明かりは光量が満月の約1/3程度なので、月明かりの影響は思ったほどでもないとも言えます。月の無い条件の良い晩には、1時間あたり数十個から100個以上の流れ星を見ることができるのですが、今年は数は半分くらいと考える方が良いかもしれませんが、それでもそこそこの数の流れ星がみられるでしょう。こぐま座流星群は、ふたご座流星群に比べると流れ星の数も少ない小規模な流星群です。下弦の月が出る前の、宵の口から夜半前の観察がオススメす。1時間に約5個ほどの出現となるでしょう。

どちらの流星群もガイド星図の赤いばつ印の放射点を中心に、四方八方に流れます。出来るだけ視界が開けていて街灯の影響がない場所で観察してください。市街地での観察は、直接街灯が目に入らない場所で観察してみましょう。ふたご座流星群は、流れる流星の数が多いだけに市街地でも1時間に数個から十数個の流れ星を見る事ができるでしょう。

ふたご座流星群ガイドマップ

ふたご座流星群2019

こぐま座流星群ガイドマップ

こぐま座流星群2019

☆太陽系からはるか遠くの宇宙から太陽系内に飛んできた『ボリゾフ彗星』

○最初に発見された恒星間天体
2017年10月19日、ハワイのマウイ島ハレアカラ山頂に設置された天体望遠鏡で、人類は遥か遠くの太陽系外の宇宙空間から太陽系内に飛来した初めての物体を発見しました。

オウムアムア

Image credit: European Southern Observatory / M. Kornmesser

パンスターズと呼ばれるこのプロジェクトは、現在2台の口径1.8メートルの望遠鏡で運用されていて最終的には、4台の大型望遠鏡で当地から見える天空を隈なく捜索し、突発的に出現する天体の発見を目指しています。このプロジェクトの最も重要な目的は、地球に衝突する危険性のある天体の検出ですが、空の広い範囲を隈なく毎日観測しているので、太陽系内の小惑星や彗星だけでなく、さまざまな新しく出現した天体を発見し続けています。そんな中発見されたのが、『オウムアムア』でした。動きを調べてみると、太陽系内を運行する天体とは比べものにならない位、高速で移動していて、その軌道を計算すると、驚くべきことに太陽系の外から高速で飛び込んできて、また高速で飛び去っていく天体であることが分かり、人類史上、はじめて太陽系内に飛び込んで来た天体という事がわかり、科学分野としては大きなニュースになり、お茶の間のニュース番組でも報道された事がとても印象的でした。明るさの変化を観測したところ、回転していてさらに、その変光範囲が異例に大きい事からとても細長い天体であることが示唆された事や、計算上の軌道から少し外れることもあり、一時太陽系外の知的生命体が太陽系を調べるために送り込んだ探査機かロケットじゃないかという説も真面目に議論されたりもしました。その後よーく調べた結果、オウムアムアの表面が太陽熱で熱せられ、表面の氷のような物質が蒸発してそのガスの放出で軌道がずれているのが分かり、結局「他の生命体の送り込んだ探査機説」は公式に否定されましたが、その議論の仮定にとてもワクワクしたのも事実です。この”表面の氷のような物質が蒸発してそのガスの放出で軌道がズレるという現象”自体は、珍しいものでもなんでもなく、太陽系の周りを回る彗星や一部の揮発物質が多く含まれている小惑星では良く観測され、「非重力効果」と呼ばれています。ですが一見ガスの噴出が見えない天体で、さらに細長い宇宙船かロケットのような形をした物体が、あたかも軌道修正用のロケット噴射をしたような軌道の変化が観測されたことから、天文学者も含めた研究者の興味を引いたのです。

○ボリゾフ彗星の発見 
 そして、それから2年も経たない今年の8月30日に、ウクライナのクリミア半島でアマチュア天文家ジェナディ・ボリソフ氏が自作の口径65センチの反射望遠鏡で、彗星のような天体を発見します。
軌道を詳しく調べたところ、オウムアムアについで二番目に発見された恒星間天体であり、まわりにガスをまとっていた事から、彗星に分類された事から、人類が発見した初めての恒星間彗星であることが分かりました。

ボリゾフ

Image Credit: NASA, ESA, and D. Jewitt (UCLA)

オウムアムアは、太陽系から去っていくタイミングで発見されたのですが、このボリゾフ彗星は、太陽系に向かってくる時に発見されたこと、またアマチュアが持つ望遠鏡でも観測できる(とは言っても高い技術が必要です)ギリギリの明るさがあり、その姿を撮影しようとみなさんがんばっているようです。

○2つ目の恒星間天体が短い期間に発見された意味
このような恒星間天体が2年も経たないうちに2つも発見された意味はとても大きいです。今までは発見されなかったにせよ、思いの他、数が多い、頻度が高いということです。またこのような数キロの大きさの恒星間天体が2つ見つかったということは、望遠鏡に捉えられないような小さなもの、例えば隕石や、流星の元になるような、小石や砂つぶの大きさの恒星間天体は、この10万倍とか100万倍くらいの数が太陽系に飛び込んで来ている可能性があるということです。恒星間を旅して渡ってくる天体は、太陽系内の運行している天体よりずっとスピードが早いのが特徴です。ここからは想像なのですが、我々が普段見ている流れ星ですが、恒星間を飛んできて地球に到達する流星物質があるとすれば、私たちの見ている流れ星の中にも恒星間を漂ってきた流れ星というものがあるかもしれません。

オウムアムアボリゾフ

 ボリゾフ彗星もオウムアムアも、どこか他の太陽系から弾き飛ばされ太陽系にたまたまやって来た天体です。下の軌道図をご覧ください。2つの天体の軌道は、双曲線軌道という軌道で、もう2度と太陽系には戻ってきません。そしていつの日か永遠に近い時が経過すれば、また今回のように、全く別の太陽系の近くを通りすぎることもあるかもしれません。そういう意味でどの太陽系にも属さない放浪者のような存在と言えるかもしれません。下の軌道図には、76年の周期で楕円軌道で太陽の周りを周回するハレー彗星の軌道や太陽の周りを回る惑星の軌道が描かれていますが、こうした閉じた軌道の天体とはまったく違うのが恒星間天体なのです。

☆冬の星座に親しむ
○冬の星座たちが見頃です。
冬の星空は夏とは逆に、天の川銀河の中心と反対方向を見ていることになります。そのため冬の天の川は、夏の天の川ほど濃くは見えません。しかし多くの1等星が散りばめられた冬の星座の中を横断しているので、星空のきれいな場所であれば淡いながら見つけるのはかんたんでしょう。

冬の星座ガイドマップ

○冬の星座のさがし方
冬の星空は一年中でもっとも1等星が多くきらびやかで、太平洋側では空気も澄んで星座観察にはとても適した季節です。冬の星座さがしは、まず「オリオン座」を見つけます。オリオン座の左上に輝く赤い1等星ベテルギウス、全天で一番明るい恒星の「おおいぬ座」のシリウス、「こいぬ座」の黄色みがかった1等星プロキオンを結ぶと、大きな逆正三角形ができます。これが「冬の大三角」です。冬の大三角を目印にさらに大きな「冬の大六角形(別名:冬のダイヤモンド)」を見つけてそれぞれの1等星を含む星座をひとつひとつたどってみましょう。シリウス、プロキオン、ポルックス、カペラ、アルデバラン リゲル。色も輝きもさまざまな個性豊かな一等星が形作る見事な姿をぜひ観察してみてください。冬のダイアモンドを見つければ、冬の代表的な星座を見つけるのは簡単です。

○冬の1等星の色を比べて見よう。
冬の星座たちの1等星を、よく見てみると、さまざまな色で輝いている事がわかります。赤い星、オレンジ色の星、黄色い星、白い星、青白い星。肉眼で観察すると、はっきり色が分かるのは、せいぜい2等星まで、
それより暗い星は、みんな白くしか見えません。それはなぜかというと、肉眼の感度の問題です。網膜の光を感じる細胞は、暗い星の色を見分ける事ができません。そこで登場するのが、双眼鏡や望遠鏡です。口径30mmの双眼鏡を使えば、3等星であれば色が分かります。口径50mmのラプトル50であれば、肉眼の50倍の光を集めるので、4等星や5等星の星の色がわかります。

○夜空にみえる恒星の色はカラフル!
さて星座を構成する星の色はなんで決まるのでしょうか。それは星の表面の温度で星の色が決まります。
赤い星の表面の温度は2500度から3000度 オレンジ色の星は4000度 黄色い星は5500度から6000度 白い星は8000度から10000度 青白い星は1万5000度から数万度にもなります。
ちなみに私たちの太陽の温度は6000度、光が強すぎて色を感知できませんが、星座の星たちと同じように遠くにあるとすると、黄色い星として夜空に輝くでしょう。

★おすすめテレビ番組
NHKのBSプレミアムの天文、星空、宇宙系の番組、コズミックフロントNEXTで弊社の天体望遠鏡『ラプトル60』が登場します。直接製品が紹介される訳ではもちろんありませんが、番組終盤の15分に、星に関わる民俗や伝承の研究者の『北尾浩一先生』が登場されるのですが、なんと北尾先生が御愛用頂いているのが、ラプトル60なのです。放送は、12月5日22時から23時です!お見逃しなく!

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初心者だけでなく、ベテランの方にも愛用されている弊社のラプトルやアトラスといった入門用望遠鏡。なぜなのかはいずれまたブログ記事にしたいと思います。
コズミック フロント☆NEXT選「占星術に魅せられて~星座をめぐる物語~」

以前にも紹介しましたが、今一度北尾先生の著書をご紹介させて頂きます!
私たちは、ギリシア神話を中心とした星座は、小学校でも習いますが、日本にも昔から、生活に根ざした独自の星座や星の名前があります。種を植えたり、収穫したり、漁労に関わる生活を支え豊かにした様々な日本独自の星たち、生活や民俗と関わる興味深い物語があるのです。関心のある方はぜひ今のうちに、お買い求めください。この手の本としては異例によく売れて重版していますが、再度の重版はさすがにないかもしれません。そうするともう手に入らないということになりますから!本屋さんもしくは、アマゾンでも手に入ります。

日本の星名事典

北尾浩一 日本の星名事典
単行本: 464ページ
出版社: 原書房 (2018/5/28)
言語: 日本語
ISBN-10: 4562055693
ISBN-13: 978-4562055692
発売日: 2018/5/28

望遠鏡基本的な使い方の確認

最近望遠鏡を買ったのだけれど、見たい天体を見つけ視野に入れるのが苦手な方、またピント合わせの極意を学びたい方は、私のブログの下記ページをごらんくださいな。スムーズにできると星空観察がもっと楽しくなりますよ。

・見たい星の位置を調べ、実際の夜空で見つける
http://blogs.yahoo.co.jp/solunarneo/55331861.html

・天体望遠鏡の視野に星を導く
http://blogs.yahoo.co.jp/solunarneo/55331775.html

・ピント合わせの極意
http://blogs.yahoo.co.jp/solunarneo/55331845.html