みなさん、こんにちは。
今年も一年間ご愛読頂きありがとうございました。
来年は、火星の準大接近など、たくさんの天文現象があります。
また、オリオン座に異変が起きています。オリオン座の赤い一等星が記録的に暗くなり、
二等星の仲間入りをしています。今までは全天で9番目の明るさで輝いていたのですが、
今は20番目以下の順位まで下がってしまっています。
今月も盛りだくさんな内容です、詳しくは記事内でご確認ください。

〈目次〉
★1月の惑星たち
★1月の天文現象カレンダー
★1月の星空情報

★1月の惑星たち
水星 ×1月10日に外合になり太陽に近く観測できない。
金星 ○夕方の西空でぐんぐんと高度を上げています。今年の金星は年始から6月4日の内合まで、形と大きさの変化を観察してみてください。
火星 △日の出前低空に上がってきます。
木星 ×太陽に近すぎて観測不適
土星 ×1月14日に合となり、太陽に近すぎて観測できません。
天王星 ○1月19日東矩 宵の口に南西の空。
海王星 △夕方、南西の空低い位置。

★1月の天文現象カレンダー
1月1日(水)元旦 初日の出
1月4日(土)しぶんぎ座流星群
1月10日(金)ふたご座η(イータ)とふたご座μ(ミュー)の星食が起こる
     水星が外合

1月11日(土)満月。半影月食が起こる。満月の時は、クレーターはあまり見えませんが、海の部分の色や、クレーターから四方八方に広がる光条が良く見えます。
1月13日(月) 成人の日
1月17日(金)下弦の月 深夜過ぎから明け方に見える半月です。月のクレーター観察の好機です。

1月25日(土)新月 前後数日は一晩中月明かりの影響がなく、星空の観測に絶好。
1月28日(火)変光星はくちょう座χ(カイ)が極大光度

★1月の星空情報

※全ての図版は、クリックやタップをするとさらに大きく表示できます※
☆オリオン座に異変が!
この冬なんといっても一番の話題は、冬の星座の代表格オリオン座でしょう。まずはオリオン座を実際の星空でご覧になってみてください。オリオン座にはベテルギウスとリゲルの2つの一等星があり、普段はほぼ同じ明るさで見えていますが、今年はベテルギウスがリゲルと比べて明らかに暗くなってしまっています。ベテルギウスは不規則変光星で、これまでも明るさが変わる星として知られてきました。そのベテルギウスがこれまで観測されたことがないほど暗くなっています。

☆ベテルギウスはどんな星か?
ベテルギウスは赤色超巨星に分類される巨大な星です。星の一生のうちの最後の段階にあります。太陽や星座を構成する星たちは、中心付近の高温高圧の場所で、核融合反応が連続的に起こり、核融合反応で生み出される莫大な熱と光で自ら輝いています。こうした星を恒星と言います。ちなみに恒星の周りを回っているのが惑星です。地球も太陽のまわりを公転する惑星のひとつです。

ベテルギウスは、星の一生のうちの最後の段階にあると書きましたが、核融合反応が最後の段階まで進み、燃料がなくなりつつあります。核融合反応がとても不安定になっているのです。そのため中心部で産み出される光や熱も不安定に変動していて、年単位の時間の流れの中で見ると、不安定に明るくなったり暗くなったりするのです。まるで古い車の調子の悪いエンジンのようでもありますね。

ベテルギウスは、太陽の約1000倍も直径がある巨大な星です。地球を直径1センチのビー玉とすると、太陽はその100倍の大きさ、例えると直径1メートルのトラックのタイヤの大きさの星です。さらにその1000倍……ということは、地球1センチのビー玉に対して、ベテルギウスは、直径1キロメートルもの大きさということになります。

ベテルギウスは現在は一等星ではなく、2等星に分類されるほど暗くなってしまっています。長年の観測結果から予測すると、1月中旬からは明るさが回復してくるはずなのですが……。

☆明るさの観察の仕方
普段からオリオン座を余程じっくり観察していない方は、今日いきなりオリオン座を見てもベテルギウスが暗くなっているとは分かりません。
まずオリオン座のベテルギウス、ベラトリクス、サイフ、リゲルの明るさをじっくり観察してみてください。今までならリゲルとベテルギウスがほぼ同じ明るさか、じっくり見るとベテルギウスが少しだけリゲルより暗いかな?という感じで見えていました。
それが、今オリオン座のベテルギウス、ベラトリクス、サイフ、リゲルの4つの明るさを比べてみると、リゲルがその4つの中では明るく、ベテルギウスの明るさは、ベラトリクス(1.6等)の明るさとほぼ同等まで暗くなっているのが分かるでしょう。
今後どこまで暗くなるか、これも注目のポイントです。
オリオン座の三つ星、アルニタク1.7等 アルニラム1.7等 ミンタカ2.3等、それとサイフ(2.1等)と比べて継続的に観察してみてください。
これまでの長い間の観測から、1月中旬ごろには、明るさは戻っていくと考えられていますが、今回は今までよりずっと暗くなっていますから、今までとは違う光度変化をする可能性がありますし、果たして今までのように明るくなってくれるのか、それも分かりません。

将来の予測はできませんが、今のこのベテルギウスの暗さはこれまでは無かったことですし、一生に一度の体験かもしれないと思って楽しみながら観察を続けるのが良いと思います。
望遠鏡を持っていなくても、都会でもくっきり観察できる観察対象ですから、本当に誰もが楽しめるという意味でも価値があるのです。
そして、これまでそこまでオリオン座をじっくり観察したことがない人も、今、ベラトリクスと同じ位の明るさになっているのを実際の空で確認さえしておけば、もし普段通りの明るさ(すなわちリゲルと同等の明るさ)に戻ったのを夜空で再度確認できれば、いかに今冬のベテルギウスが暗かったか後で改めて認識できることになります。
ぜひ見逃さないようにしてください。千載一遇のチャンスと言えることは間違いのない事ですから。

オリオン座の他の恒星と見比べて観察すると良いでしょう。下の星図に比較対象の星の明るさを表示しておきましたので観察に使ってください。

オリオン拡大減光比較small
オリオン広域減光比較マップsmall

☆日の出前の星空と初日の出時刻
関東付近で日の出1時間前の星空が下図です。夏の星座であるさそり座の頭部が上ってきています。今年秋に準大接近となる火星が1.6等級の明るさで見えています。日の出の位置は概ね図版下の↑の場所です。気象予報では、日本海側をのぞく場所では概ね初日の出が見られる天候のようですが、今年一番の冷え込みとなりそうですから、しっかり防寒して初日の出観望にのぞんでくださいね。

元旦日の出1時間前の星空small

元旦 初日の出時刻は、場所によって違います。日本国内で一番初日の出が早いのは、南鳥島午前5時27分ごろになります。反対にもっとも初日の出が最も遅いのは、日本の最西端 与那国島の午前7時32分ごろになります。

各地の初日の出時刻は、札幌 午前7時06分ごろ 仙台 午前6時53分ごろ 東京都内 午前6時50分ごろ 東京都小笠原村 午前6時20分ごろ 富士山山頂 午前6時42分ごろ 名古屋市 午前7時00分ごろ 金沢市 午前7時5分ごろ 大阪府 午前7時5分ごろ 岡山市 午前7時11分ごろ 広島市 午前7時16分ごろ 福岡市 午前7時23分ごろ 鹿児島市 午前7時17分ごろ 那覇市 午前7時17分ごろ 石垣島 午前7時27分ごろ となっています。

☆しぶんぎ座流星群
※観測のポイント
しぶんぎ座流星群は、8月のペルセウス座流星群、12月のふたご座流星群とともに三大流星群のひとつです。今年のしぶんぎ座流星群は月明かりの影響も受けず好条件ですが、残念ながら極大時間(流星が最も流れる時間)が1月4日の午後5時で夜間ではないため、1月4日の未明から明け方にかけての流星の数は1時間に15から20個程度と予測されています。観測は上弦の半月が沈んだ後、1月3日深夜過ぎから4日早朝、翌日の1月5日深夜過ぎから6日早朝の二日間になります。

☆しぶんぎ座流星群の流れ星の特徴
対地速度は秒速41km/秒程度で、対地速度が速いペルセウス座流星群秒速59km/秒や、しし座流星群71km/秒に比べると、ゆったりとした流れ方が特徴です。

☆流星観測のこつ
1.市街地であれば街灯が直接目に入らない場所で
2.上弦の月が夜半に地平線に沈んで月明かりの影響のない夜半過ぎから観測することをおすすめします。

☆可能であれば、星空の綺麗に見える海や山へ遠征して見てください。市街地での観測では、流星の数が予想されている数の数分の1の数になってしまうでしょう。

☆流星群の流れ星は、流星群の放射点(下記図版に図示)を中心に四方八方に飛びます。出来るだけ空を広く見て観測するのが、沢山の流れ星を見る秘訣です。

しぶんぎ座流星群ガイドマップ

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☆冬の星座に親しむ(先月号と同じ内容です)
○冬の星座たちが見頃です。
冬の星空は夏とは逆に、天の川銀河の中心と反対方向を見ていることになります。そのため冬の天の川は、夏の天の川ほど濃くは見えません。しかし多くの1等星が散りばめられた冬の星座の中を横断しているので、星空のきれいな場所であれば淡いながら見つけるのはかんたんでしょう。

○冬の星座のさがし方
冬の星空は一年中でもっとも1等星が多くきらびやかで、太平洋側では空気も澄んで星座観察にはとても適した季節です。冬の星座さがしは、まず「オリオン座」を見つけます。オリオン座の左上に輝く赤い1等星ベテルギウス、全天で一番明るい恒星の「おおいぬ座」のシリウス、「こいぬ座」の黄色みがかった1等星プロキオンを結ぶと、大きな逆正三角形ができます。これが「冬の大三角」です。冬の大三角を目印にさらに大きな「冬の大六角形(別名:冬のダイヤモンド)」を見つけてそれぞれの1等星を含む星座をひとつひとつたどってみましょう。シリウス、プロキオン、ポルックス、カペラ、アルデバラン リゲル。色も輝きもさまざまな個性豊かな一等星が形作る見事な姿をぜひ観察してみてください。冬のダイヤモンドを見つければ、冬の代表的な星座を見つけるのは簡単です。

冬の星座ガイドマップ

☆冬の1等星の色を比べて見よう。
冬の星座たちの1等星をよく見てみると、さまざまな色で輝いている事がわかります。赤い星、オレンジ色の星、黄色い星、白い星、青白い星。肉眼で観察すると、はっきり色が分かるのは、せいぜい2等星まで、それより暗い星は、白くしか見えません。それはなぜかというと、肉眼の感度の問題です。網膜の光を感じる細胞は、暗い星の色を見分ける事ができません。そこで登場するのが、双眼鏡や望遠鏡です。口径30mmの双眼鏡を使えば、3等星であれば色が分かります。口径50mmのラプトル50であれば肉眼の50倍の光を集めるので、4等星や5等星の星の色が分かります。

☆夜空に見える恒星の色はカラフル!
さて、星座を構成する星の色は何で決まるのでしょうか。それは星の表面の温度です。
赤い星の表面の温度は2500度から3000度 オレンジ色の星は4000度 黄色い星は5500度から6000度 白い星は8000度から10000度 青白い星は1万5000度から数万度にもなります。
ちなみに私たちの太陽の温度は6000度、光が強すぎて色を感知できませんが、星座の星たちと同じように遠くにあるとすると、黄色い星として夜空に輝くでしょう。

※※※重要なお知らせ※※※
大沼が担当してきた、この星空情報メールやフェイスブック、ツイッターでの星空情報、新製品情報の発信ですが、今月が最後になります。今後は、スコープテックの今村や他のスタッフが発信していく事になりました。

これまで長期に渡りご愛読頂きありがとうございました。来月からは、担当は変わりますが引き続き星空情報メールやSNSで発信される天文情報、星空情報をよろしくお願い申し上げます。