10月2日未明の紫金山・アトラス彗星(下の灯りは江ノ島)    撮影:萩原亜香

☆ 明るくなるのか?それとも・・・・

2023年1月に中国の紫金山天文台で発見された紫金山・アトラス彗星は、9月28日にもっとも太陽に近づき(近日点通過)ました。10月12日には地球にもっとも近づき(近地点通過)、夕方の西空に移動します。
この彗星、長い尾をひく大彗星になることが期待されるとマスメディアやネット等で騒がれています。

ひじょうに楽しみな彗星なのですが、彗星の増光の予報はたいへん困難で、「期待はずれ」になることもしばしばです(期待以上の大彗星になることもまたあります・・・・)。
そこでこの号外では、もし紫金山・アトラス彗星が幸運にも明るくなった場合どこに見えるか、どのように見たらよいかを簡単にお伝えします。

今回初めて彗星を見るという方を対象に記しましたので、さらに詳しい観測法や直近の彗星の状況をお知りになりたい場合は、国立天文台をはじめとする各研究機関や、科学館等からリリースされる情報を活用してください。

★どこにあるか

下の図版をご覧ください。
夕方の空にまわった後の、18時の彗星の位置を記してあります。
ご覧のとおり、12日は低空すぎて、ひじょうに見ずらいと思います。
この後彗星は、おとめ座からへび座、へびつかい座と移動していきます。
16日を過ぎると、18時の高度が20°を越え、地平線付近に雲がなければ、見やすい位置に移動していきますが、今度は太陽から遠ざかるため、明るさや尾の長さは小さくなっていきます。

★恒星に比べて淡く、見ずらい

いろいろな予想、予報が出ていますが、10月2日未明時点では3等級くらいになっているようです。写真に撮影してみるとかなりの長さの尾があります。

ただし、夕方の空にまわった後、どのていどの明るさ、尾の長さになるかは明言できません。2等級になるとの予報がありますが、かつて期待されたアイソン彗星のようにバラバラに分解してしまうことも考えられます。

今回初めて彗星を見るという方は注意していただきたいのですが、彗星の2等というのは、恒星の2等に比べてかなり淡く暗く感じます。1点から光が出てキラキラした恒星と違い、ボーっと広がった彗星は同じ2等級でも淡い光芒となります。また、地平線近くの低高度は雲やダストがかかりやすいので、初めて見る方には見ずらく、見ることができても貧弱な感じがするかもしれません。

★最も明るくなるのはいつか

最も明るくなる日は、正直なところ予想がつきません。
近日点通過直後に明るくなる場合もありますし、アイソン彗星のように太陽熱でバラバラに壊れてしまうこともあります。
幸いにして彗星本体が健全なまま太陽をやり過ごせたなら、少し遅い10月下旬でも長い尾が見られることもあります。
要は、いつ明るくなっても対応できるようにしておくしかないでしょう。

★もし明るくなったら

◎西が開けた場所を

彗星が西空にまわった直後は、まだ低空にいますので、とにかく西から南西が開けた場所を確保してください。
邪魔な建物が視界を遮らない、高台のような場所がよいでしょう。

◎明るいうちから

西に低いため、少しでも長い時間楽しむためには、早く彗星を見つけることが必要です。
明るいうちから観測場所に陣取り、“場所のアタリ”をつけておくのがコツです。
ただし望遠鏡や双眼鏡で日没前からサーチするのは、太陽が視野に入って危険です。望遠鏡や双眼鏡を使う際は、できれば太陽が視界から没してから使う方が安全です。

◎双眼鏡を活用

彗星のように広がった天体を見るのには、視野が明るい双眼鏡が好適です。
“彗星がいそうな場所”に双眼鏡を向け、日没直後の空がまだ明るいうちから、縦でも横でもよいので手持ちで何度も往復スゥイープしてみましょう。あるていど空が暗くなってくるタイミングで、彗星が見えてくることがあります。

参考リンク:

・紫金山・アトラス彗星の観察チャンス(国立天文台)

https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2024/10-topics05.html

・紫金山・アトラス彗星はどこに見える?(アストロアーツ)

https://www.astroarts.co.jp/special/c2023a3/chart-j.shtml