ビクセンLVWアイピースは、先ごろ製造元のビクセンで惜しまれながらも製造を終えてしまいました。紫綬褒章を受賞した元日本光学(ニコン)取締役 大井製作所所長の脇本善司氏が、ニコン退職後に設計されたアイピースです。
脇本善司氏は、ニコンで長年にわたり、同社の高解像度レンズ(カメラ用、半導体製造用、その他産業用)の開発に携わり、数々の画期的な発明や技術開発に尽くされた方です。
LVWは、その脇元氏がニコンを退職された後に設計された接眼レンズで、現代の最新の基準で見ても超一流の見え味を誇っています。昨今、接眼レンズは、見かけ視界70度から100度に及ぶ超高視界のものが持て囃されています。高級アイピースは見かけ視界の広さで戦っている状態です。
しかし65度を超えるような見かけ視界を持っていても人間の目は一度に視野を捉える事はできませんから、そのようなアイピースを覗く時は、アイピースの中をギョロギョロと覗き込むように見る感じなります。これはこれで楽しいですし、独特の臨場感を伴います。まるで宇宙船の窓から外を見ているようだと表現する方もいます。
超広視界アイピースで有名なテレビュー社のアイピースは高価ですが、ルージュ200にも大変オススメです。しかしながら、広視界をうたえど、とても高価なのにオススメできないものも多数存在します。
ビクセンLVWの見かけ視界は65度、広視野角ではありますが、今となっては見かけ視界はそうした超広視野角アイピースと比べると凡庸ではあります。しかし標準的な視野角のアイピースと比べると、視野の直径で1.5倍、面積で比べると2.2倍以上もの広い範囲を見渡せますからかなり快適な視野です。
視野角65度のアイピースなら、もっと安いものもあるじゃない?という声も聞こえて来そうですが、LVWは、無理に視野角を広げた接眼レンズではなく、さすが脇本氏の設計、視野の最周辺まで、中心から解像力をほとんど落とさず視野環に消えていく見事な周辺像を持っています。
ロングアイリリーフ
メガネを使用していても、使用しなくてもとても覗きやすいロングアイリリーフな光学設計です。
覗きやすい
視野角が広くても、接眼レンズを覗く場所に敏感すぎて、少しでもその位置から目がズレると視野がブラックアウトしてしまう接眼レンズもありますが、『LVW』はスイートスポット(アイポイント)が広く、多少目の位置がずれてもブラックアウトしないので天体観測に不慣れな人でもとても覗きやすい接眼レンズです。
ロングアイリリーフだけでなく、アイポイントが広い事は、この接眼レンズの大きな長所です。
高コントラスト
レンズ各面に高度なマルチコートが施されています。
レンズに映る反射像を見ると分かりますが、接眼レンズを透過してくる星の光の色が偏らないように、各面仕様の違うマルチコートが施されていますので、色が偏らず、正しい色で天体が観察できます。
また、レンズ表面での反射が良質なマルチコートで抑えられているので、多数のレンズの組み合わせの凝った設計の接眼レンズですがこの接眼レンズで見える天体像はとても高コントラスです。
視野の最周辺部まで高い解像力
LVWの視野内の中心部の解像度はとても高いのですが、視野の最周辺部までその解像度は高いレベルで保たれています。
見かけ視界が70度を超える接眼レンズでも、視野直径の50%より外側は解像力が大きく低下する広視界接眼レンズが沢山見受けられる中で、『LVW』の解像力が周辺まであまり低下しない特徴として、使える実視界はかえってそれらの補正しきれていない接眼レンズより広いと言えます。
『LVW』の評価がとても高いのは、使える実用視界が広いことにより、覗いた時の印象がすっきりし、とても見易いという、素晴らしい特徴に負うところが多いのです。
F6からF4の口径比が小さい望遠鏡にも対応した設計
口径比が大きい望遠鏡より、口径比が小さい望遠鏡の方が、接眼レンズに対する性能が要求されるようになりますが、『LVW』シリーズの接眼レンズは、F4レベルの光学系にも対応した設計がなされています。
ダブルスリーブを採用
LVW接眼レンズは、銀色のスリーブは、差込径31.7mmのアメリカンサイズ、根元部分の黒い部分が差込径50.8mmサイズのダブルスリーブになっていて、低倍率の大型の接眼レンズから切り替えるときに、スリーブアダプターをわざわざ取り付ける必要がなく、とても便利に使えるのも美点です。
LVW 5mm (見掛視界 65度 / アイレリーフ 20mm)
ルージュ200での倍率は240倍。好条件下の惑星や月の強拡大をしたい時に、ルージュ200の性能が極限近くまで引き出されます。