天体望遠鏡を使った天体観測を始めるにあたって、夜空にかかる星座を覚えるのは必須であるとともに、楽しいことです。星座を覚えると、時間の経過や、季節の移り変わりを星空から感じられるようになるばかりでなく、星座の中に散らばっている星雲や星団、銀河、重星や惑星などを探す際の目印になります。また流星群にはふたご座流星群、ペルセウス座流星群など星座の名前が冠されたものが多くありますが、星座を知っていれば流れ星が良く見える方向も分かる様になるのです。

星座を覚えるコツは、自分の知っている星座、オリオン座、北斗七星(おおぐま座の一部)など自分の知っている星座に隣り合ったものから順番に覚えていくのが良いでしょう。また星座を覚えたら、その星座にまつわる楽しい神話の世界も、本やネットで調べてみるのも良いでしょう。

楽しんで覚えて、星図を見なくても周りの人達に星座を説明できるようになるのがゴールでしょうか。間違いなく、キャンプ場での人気ものになれます。

夏の星座

夏の星座

七夕で有名な牽牛と織女にはくちょう座のデネブで形作られる大きな三角形は夏の大三角と呼ばれています。市街地などの明るい夜空でも容易に見つけることが出来ます。

夜空の美しい場所に旅行に出かける機会に恵まれたら、や座やいるか座、こぎつね座といった小さな星座も見つけてみましょう。

夏の大三角が頭上に高く登るころ、南の空に眼を転じると天の川が一際濃くなっているのが分かるでしょう。この辺がいて座で、地球から見て銀河系の中心方向になり、沢山の星が密集してみえるので、天の川が一番濃く見えているのです。夜空の美しい場所に旅行に出かける機会に恵まれたら、や座やいるか座、こぎつね座といった小さなかわいらしい星座も見つけてみましょう。

こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブの三つの一等星を頂点とする夏の大三角を見つけましょう。この辺りから、南のいて座に流れ下る天の川は見事な眺めです。天の川の中や周辺は、明るい散光星雲や散開星団、球状星団が点在し、夜空の中でも最も見応えがあるエリアです。双眼鏡や望遠鏡で覗けば、興味深い様々な天体が見えてきます。

秋の星座

秋の星座

秋の星座は、1等星がみなみのうお座のフォーマルハウトだけと、すこし寂しい星空ですが、我々の銀河の円盤と垂直方向になるため、春の星空と同様、双眼鏡と望遠鏡を使うと、私たちの太陽系が属する銀河系(太陽のような星が2000億が集まった星の大集団)の外にある他の銀河(銀河系の外の銀河ということで系外銀河と呼ばれています)がたくさん見えてきます。銀河系内に存在する星間ガスなどの影響を受けることなく非常に遠くの宇宙を見透すことができるのです。

すばる星団(410光年)のような散開星団や、干潟星雲やオリオン星雲(1500光年)に代表される散光星雲、球状星団(数万光年)は、私たちの属する銀河系の内部や周辺に存在するもので、系外銀河(銀河系の伴銀河を除き、数百万光年から百数十億光年)に比べるとずっと我々太陽系に近い場所にあります。

秋の星座は、まず「秋の大四角形」とも「ペガススの大四辺形」とも呼ばれる夜空に掛かる大きな四角形を見つけることから始めましょう。

この四角形をめじるしに各辺を延長すれば、淡くて見つけづらい秋の星座の場所の検討をつけるのに便利です。この四角形を形作る4つの星は、一つがアンドロメダ座に属し、残りの三つがペガスス座に属する星達です。

ペガスス座のα星とβ星の辺を南にずっと伸ばしていくと、みなみのうお座のフォーマルハウトが見つかります。同じ辺を逆方向に伸ばしていくと、北極星にぶつかります。

アンドロメダ座αとペガスス座βの延長線上には、みずがめ座、さらに先にはやぎ座を見つけることができるでしょう。アンドロメダ座αとペガスス座βの延長線上にはくじら座の尾にあるくじら座βが見つかるでしょう。くじら座には、有名な変光星であるミラがあります。

春の星座

春の星座

身を切るような冷たい風が吹く季節は終わり夜空も、春の星座達が占めるようになります。

春の星空は冬や夏のにぎやかな星空とは異なり、星がまばらに見えます。春の星空の方向は、私たちの太陽系が属する直径10万光年もある銀河系の円盤と、垂直方向になるため、星の密度が低いのです。

一方で、我々の銀河系の外の世界を覗くには、最適な季節といえます。

おおぐま座の北斗七星からしし座を経ておとめ座あたりに掛けて、広大な宇宙空間に散在する無数の銀河がひしめきあっているようすが、観察できます。その内幾つかは小型の望遠鏡でも、存在が確認できます。口径10センチを超える望遠鏡と澄んだ星空の下であれば、淡い米粒のような沢山の系外銀河が観察できるでしょう。そのひとつひとつが、1000億以上の恒星(太陽のように核融合反応でみずから輝く星)の大集団なのです。宇宙空間全体には、銀河が1000億も存在するといわれています。ということは、宇宙空間に存在する恒星の数は1000億の1000億倍ということになりますね。

春の星座は、おおぐま座の北斗七星からたどっていくと良いでしょう。北斗七星のひしゃくの柄の部分の曲線をそのまま延長していくと、うしかい座のオレンジ色の一等星アルクトゥールスに届きます。さらにその曲線を伸ばしていくと、おとめ座の白い一等星のスピカを探し当てることができるでしょう。

アルクトゥールスとスピカとしし座のおしりの二等星デネボラを結ぶと春の大三角になります。しし座のデネボラの南側には、やや黄色味を帯びたあまり瞬かない土星が見えています。デネボラの西に眼をやるとしし座の一等星レグルスも見つけることができるでしょう。星空の澄んだ場所であれば、うしかい座としし座の間あたりになんだかもやもやしたやや暗い星がたくさんあるのが分かるでしょう。かみのけ座の星達です。暗い星で構成された星座で他の星座のようにはっきりしたものではありませんが、かみのけ座の星達が肉眼で確認できれば、美しい星空であるといえるでしょう。

冬の星座

冬の星座

冬の星空は沢山の一等星が見えてとても綺麗です。一年のうちで一度にもっとも沢山の一等星がにぎやかに輝いています。冬の大三角を形作る オリオン座のベテルギウス、こいぬ座のプロキオン、おおいぬ座のシリウス、ふたご座のポルックス、ぎょしゃ座のカペラ、おうし座のアルデバラン、オリオン座のリゲルを加えると7つの一等星が輝きます。
それぞれの一等星を目印に、星座をひとつづつ辿れば、冬の星座は簡単に見つけることができます。

オリオン座が真南にくる、丸い星図の日付と時間に夜空を見上げれば、一度に冬の星座を見つける事が出来ます。冬の星座の代表で、形もわかりやすいオリオン座から、見つけてみましょう。南の空の中天に、砂時計のような形で星が並んでいるのが見つかりましたか、左上の赤い星が赤色巨星ベテルギウス、右下の白い星がリゲルです。オリオン座さえ見つけてしまえば、明るい一等星を頼りに冬の代表的な星座をたどるのは簡単です。まずは星空の目印、冬の第三角形を見つけてみましょう。ベテルギウスの右側に目を向けるとこいぬ座のプロキオン、オリオンとベテルギウスを底辺に下向きの三角形の頂点にぎらぎらと輝くのがおおいぬ座のシリウスです。さらに範囲を広げ、シリウス、プロキオン、ふたご座のポルックスうぎょしゃ座の黄色い一等星カペラ、おうし座の赤い一等星アルデバランとオリオン座のリゲルと結んでいくと冬の大六角形(別名 冬のダイアモンド)のできあがりです。

冬の星座の中は、星雲星団の標本箱です。肉眼でも見えるのが、おうし座のアルデバランを含むV字型の星の並び、これはヒアデス星団です。年老いた星達の集団です。そのすぐそばには、若い青い星が沢山密集している有名なすばる星団(プレアデス星団)が見えます。

将棋の駒のような五角形に星が並んだぎょしゃ座の近辺は、M36,M37,M38の三つの散開星団が。三つとも特徴的な星の並びをしているから、是非低倍率の接眼レンズをつけた望遠鏡で観察してみましょう。

最初に見つけたオリオン座、横に並んだ三つ星の下を良く見ると、縦に並んだ三つ星があります(小三つ星)その真ん中の星を良く見ると何となく潤んでいるように見えます。これがオリオン大星雲(M42)です。

双眼鏡や望遠鏡を向けると、羽を広げた蝶のように濃淡のあるベール状のうつくしい姿がみえます。オリオン大星雲は、最も代表的な散光星雲で、ガスから次々と新しい星が産まれている星のゆりかごです。

望遠鏡でみると中心部には、この星雲から産まれた星達が集まるトラペジウム星団が見えます。小型望遠鏡で見えるのはそのうち4つ。ひとつの星の質量が私たちの太陽の15倍から30倍もあります。表面温度は数万度(太陽は6000度)の産まれたばかりの星(原始星)です。

この星たちの近くには小型の望遠鏡では見えない星も含めると数百個の星があるそうです。これらはすべてオリオン星雲から産まれた星達で、これらの星達から放たれる光でオリオン星雲全体が照らしだされているのです。

まだまだ紹介しきれない星雲星団がたくさんあるけど、それについてはコラム「星雲星団の楽しみ方」をごらんください。美しい星雲星団を見るには、月明かりがない夜に、星空ができるだけ美しい場所に出かけて観察するのがオススメです。淡い星雲星団は、市街地の街灯にすぐかき消されてしまいます。