☆ ごあいさつ

皆さま、今年の大型連休はいかがでしたか?
全部晴天とまではいきませんでしたが、月齢のめぐり合わせもよく、星空を楽めたのではないでしょうか。
今回は「号外」です。

★ 反復新星

かんむり座T(T CrB)という10等級の星があります。市販の普通の星図に出ていないくらい暗い地味な星です。
ところがこの星、反復新星(あるいは再帰新星とも言う)というタイプの変光星で、80年ていどの周期で爆発を起こしています。
この星がほどなく爆発しそうになっていて、2等級になることが予想されています。
かんむり座でいちばん明るいαCrB(アルフェッカ)を超える明るさになるかもしれないのですから、これは目が離せません。

参考リンク:

かんむり座T星(wikipedia)

https://w.wiki/9sR

★大雑把なメカニズム

かんむり座Tは白色矮星を伴星に持つ近接連星で・・・・
 (1)主星から発生した水素ガスが連星系全体を覆いつつ、徐々に伴星に溜まっていく。
 (2)ガスがあるていど溜まると臨界量に達して、爆発!
 (3)それをこちら(地球)から見ると、新しい星ができたように見える。
そんな流れが80年程度のサイクルで、反復して起きているわけです。

参考リンク:

・再帰新星/天文学辞典(日本天文学会)
 https://astro-dic.jp/recurrent-nova-2-2/

★そろそろ来そうだ

かんむり座Tは、前回は1946年に爆発しています。
専門家の調べによると、現在爆発の予兆が見られており、予報日は2024年の2~9月とのことです。
この時期、ちょうどかんむり座が見えているというのは、ひじょうにありがたいことです。
10㎝クラスの望遠鏡でも見えるか見えないかの星が、肉眼ラクラクの2等星になるのですから、これは見ものでしょう。
なお、この文章を書いている時点(5月7日)では、まだ双眼鏡でも見えない明るさです。

★どこにあるの?

図に位置を示します。
かんむり座ε(イプシロン)星のすぐ近くです。
ふだんは10等級ですから、口径10cm以下の望遠鏡ではほとんど見えないでしょう。また市販の星図では7~8等級までしか記されてないのが多いので、星図で探すのは難しいでしょう。

★どう楽しむの?

照明の少ない公園などの定位置を決めておいて、仕事帰り、飲み会帰り、デート帰りなどにかんむり座の位置を見てみましょう。
ふだんはどの星だかよくわからないでしょうが、この段階では見えなくてよいのです。
長い時間見る必要はないですが、ちょうど爆発のタイミングに出会うには、回数を稼ぐことが重要です。
双眼鏡があれば、早めに(暗いうちから)確認できるので、効率的です。通勤用のバッグに双眼鏡を入れたままにして、いつでも取り出せるようにしておくのがコツです。
もし今晩ε星の脇に“昨晩までなかった星”があったら、あなたはかんむり座T星の爆発に立ち会えたことになります。もしかしたら第一発見者になるかも。

でも、もしかすると

新星爆発は、日食や月食などと異なり、はっきり決まった日時に起きる現象ではありません。
ですから、この記事の掲載時にはすでに終わっているかもしれません。
また、数日間曇天が続いているときに起き、晴れたときにはもう終わっていた、なんてこともないとは言えません。
そのときは・・・・・すっぱり諦め、80年後に期待しましょう。